売主・買主双方にメリットあり?! 実施状況の説明が義務化された「インスペクション」について

不動産売却コラム

2018年4月1日に施行された改正宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者には、中古住宅を仲介する際に「インスペクション(建物状況調査)」について説明することが義務付けられるようになりました。

まだまだ聞き慣れないと感じる方が多いインスペクションについて、実施した際の売主・買主双方のメリットを含め、詳しく見ていきたいと思います。

インスペクションとは

「インスペクション(建物状況調査)」とは、英語で「調査」「検査」を意味する言葉で、建築の専門家が目視や計測等により、中古住宅の劣化や性能低下の有無について調査・報告するものです。

主に屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの基本構造部分を対象とした調査が行われ、居住の用に支障をきたす瑕疵(キズ)がないかどうかをチェックしていくものになり、「ホームインスペクション(住宅診断)」などと呼ばれることもあります。

このインスペクションを行う「既存住宅状況調査技術者」には、誰でもがなれるわけではなく、建築士(一級、二級、木造建築士)が講習を受け、修了考査に合格し、資格登録されなければなりません。つまり、インスペクションは、建築の専門家のみが実施できる業務ということになります。

インスペクションにかかる費用は、戸建住宅とマンションで異なり、木造戸建て住宅の場合で4.5万円~6万円程度、マンションの場合で5万円程度と言われていますが、物件の広さや現況、業務オプションによっても変化します。また、インスペクションを担当する事業者によっても異なりますので、詳細については事前に不動産会社にご相談ください。

このインスペクションについて、改正宅建業法では、媒介契約締結時におけるインスペクション業者のあっせん、重要事項説明書・契約書における説明、書面での確認等が義務付けられるようになりました。

インスペクションの実施自体は義務付けられてはいませんが、今後、インスペクション済みの物件であるかどうかが、中古住宅の売買においてますます重要な位置づけとなっていくと考えられます。

インスペクションを実施する売主のメリット

売主側のメリットとして、インスペクションを実施した結果、一定の基準をクリアすることができれば、「この住宅は概ね問題ない」という建築の専門家によるお墨付きがもらえることになります。これにより、買主に安心感を与えることができ、物件売却がスムーズに進むことが期待されます。

また、昭和56年6月1日以降の新耐震基準の建物であれば、インスペクションで一定基準をクリアすることができれば、既存住宅瑕疵保険への加入も可能となります。※1

既存住宅瑕疵保険に加入すれば、万が一売却後に瑕疵が発見された場合でも売主側の損害賠償を最小限に抑えることができますし、買主にとっても安心材料となり、早期売却・高値売却の可能性が高まると考えられます。

インスペクションで基準をクリアできなかった場合でも、既存住宅瑕疵保険加入に必要な補修方法等のアドバイスを受けることができますので、物件力を向上させるという点でも、インスペクションを受ける意味はあると考えられます。

買主側がインスペクションを希望している場合、応じないと「この物件には何か問題が隠れているのでは」と疑念を抱かせてしまうことにもなるため、基本的には応じることが望ましいと考えられます。

ただし、不適合だった場合、調査結果を口外されて風評被害を受けるリスクもあるため、買主側にインスペクションの結果については、口外しない旨の守秘義務を結ぶことがポイントになります。

インスペクションの実施前に、売主・買主双方による守秘義務条項が入った合意書を作成するとよいでしょう。

※1
既存住宅瑕疵保険に加入するために必要な検査と、いわゆるインスペクションは全く同じものとは言えません。保険加入時の検査は、保険の対象となる雨漏りや主要構造部に関する項目のみが対象となり限定的です。インスペクションでは、保険加入を目的としているわけではなく、買主が購入した後に補修すべき点などがないかをアドバイスすることを目的としているため、保険対象の項目以外も細かく診断しています。

買主にとってのインスペクションのメリット

インスペクションで一定の基準をクリアした物件は、建築の専門家により確認調査で住宅品質を証明されたことになるため、買主側にとっても大きな安心材料となるため、購入を後押しする要因になり得ます。

さらに、瑕疵担保保険に加入している物件であれば、不動産取得税や登録免許税の優遇措置を受けることができる場合がありますので、メリットは大きいと言えます。軽減措置の適用を受けるためには、いくつかの要件がありますので、詳しくはお問い合わせください。

日本では、まだまだ馴染みのない「インスペクション」ですが、アメリカなどでは既に中古住宅の売買に不可欠な存在になってきています。不動産取引の安全性を考えるのであれば、インスペクションは売主・買主双方にとって大きなメリットがあると考えます。

インスペクション済み物件の購入、インスペクションを実施しての不動産売却については、京都洛北不動産にお気軽にご相談ください。

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