一物五価と言われる不動産の評価額と不動産売却時の「相場価格」「査定価格」「売出価格」「成約価格」について

不動産売却コラム

不動産の売却を検討する際、やはり気になるのは売却価格です。

大切な資産を出来るだけ高く売りたいと考えるのは当然のことですが、不動産の場合、現実的にいくらで売れるかを正確に把握することは簡単ではありません。

今回は、「一物五価」とも言われる不動産の評価額と、売却時に関係する「相場価格」「査定価格」「売出価格」「成約価格」といった様々な“不動産価格”について考えてみたいと思います。

「一物五価」とは

不動産価格の「一物五価」とは、一つの不動産に対して5つの評価額があることを意味する言葉です。それぞれの評価額は、目的や決定者、基準日などによって異なり、様々な局面で活用されています。

– 時価(実勢価格):実際に市場で取引される不動産の価格です。売主と買主の合意によって決まります。

– 公示地価(公示価格):国土交通省が毎年1月1日時点で発表する全国約26,000地点の標準地の価格です。土地売買の際の指標となります。

– 基準値標準価格(基準地価):都道府県が毎年7月1日時点で発表する基準地の土地価格です。公示地価を補完するためや、半年ごとの動向を見るために利用されます。

– 相続税評価額(相続税路線価):国税庁が毎年1月1日時点で発表する相続税・贈与税の目安となる土地価格です。路線(道路)ごとに決められます。

– 固定資産税評価額(固定資産税路線価):市町村(東京都23区は都)が3年に一度発表する固定資産税・都市計画税などを算出するための土地価格です。路線(道路)ごとに決められます。

これらの評価額は、インターネットや各公的機関で調べることができます。不動産取引や運用をする際には、これらの評価額を参考にして、適正な不動産価格を判断することが重要です。

不動産売却に関係する様々な“不動産価格”

不動産売却時の価格は、売主と買主の合意によって決まる「実勢価格」となります。

上記の「公示価格」「基準地価」「相続税路線価」「固定資産税評価額」の動向に影響は受けるものの、実際には直近の取引事例との比較によって決まることが多くなります。

ここでは、不動産売却の際に関係する「相場価格(実勢価格)」「査定価格」「売出価格」「成約価格」について、整理しておきましょう。

>相場価格(実勢価格)

直近の不動産売買の取引事例をベースに、景気動向や地価動向を加味した価格水準をいいます。

国土交通省の「土地総合情報システム」、「レインズ・マーケット・インフォメーション」などのサイトでは、物件を特定することはできませんが、成約情報(物件価格、土地面積、建物面積、間取り、築年数、成約時期)を閲覧することができます。

>査定価格

物件調査(現地調査)と不動産相場に関する客観的な資料を基に、不動産取引のプロフェッショナルである宅地建物取引業者が提示する価格をいいます。

概ね3ヵ月程度で売却できる価格水準と考えられており、相場価格をベースに取引事例比較法で算出することが多いため、本来であれば、不動産会社によって極端に差が出るものではありません。

しかし、複数会社で競合する不動産一括査定サイトでは、売却依頼を獲得することを目的に高額の査定価格を提示するケースが増えており、業界内でも大きな問題になっています。

自動車の買取一括査定とは異なり、不動産売却の場合は、査定価格が高いからといって、その価格で売れる訳ではありません。一括査定には、十分にご注意ください。

>売出価格

査定価格を参考にして、売主と不動産会社が協議の上で取り決めた価格をいいます。

この価格で売却活動をスタートすることになりますので、納得できる価格水準であることが求められます。

売主の希望や意向が反映されるため、査定価格より高めの設定になることが多いのですが、相場価格との乖離が大きいと成約までに時間がかかるため、慎重に判断しましょう。

>成約価格

売主と買主が合意し、売買契約が成立した価格を成約価格といいます。

売却活動の際に、買主側から値段交渉が入ることも多いため、成約価格は売出価格と同等もしくは低くなることが一般的です。

売却活動が長期化すると、売れ残り感が出てくるため成約価格は低下することになります。

売出価格を決めるために知っておきたいこと

不動産売却活動をスタートするためには、売出価格を決める必要がありますが、高く設定し過ぎると売れ残り物件になってしまいます。

安く設定し過ぎると、早期売却には成功するものの、「もっと高く売れたのではないか」という後悔が残ります。

売出価格はどのような点に注意して決めればいいのでしょうか。

>不動産に同一条件の物件は存在しない

不動産は、車などの大量生産商品と異なり、同一条件の物件は存在しません。(不動産の「個別性」)

同じマンションであっても、間取り、面積、方角、所在階、日当たり、眺望などは微妙に異なり、物件価格にも影響を与えます。

売却不動産の個別性に着目し、強みを上手にアピールすることが出来れば、高値売却の可能性が生まれます。

>最終的な買い手は一人だけ

不動産売却は、大量生産された商品を大量に売るプロセスではなく、一つの物件を一人の買い手に売却できれば、取引は完結することになります。

仮に相場よりも高く売り出していたとしても、隣りの方が購入を決めて、あっさりと売却活動が終了してしまうことも珍しくありません。

不動産の価値は、一般的な相場価格とは別に、買い手による個別評価が大きな影響を与えることを知っておきましょう。

>値下げのスケジュールを予定しておく

「同一条件の不動産は存在しない」「最終的な買い手は一人だけ」ということを踏まえ、高めの売出価格で売却をスタートすることは、十分に意味があることだと考えます。

しかし、問い合わせ等の反響が少なければ、どこかのタイミングで値下げを検討しなければなりません。売却活動の長期化を避ける意味でも、値下げのスケジュールを予め決めておくことは重要だと考えます。

京都洛北不動産では、単に「査定価格」をお伝えするだけでなく、それぞれの不動産価格の意味についても詳しくご説明しています。

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