都市部で住宅価格が高騰していることもあり、最近では、築年数の古いマンションをフルリノベーションして住む方が少なくありません。キッチン、トイレ、バスルームなどの水廻り設備を最新のものにして、クロス、フローリングを張り替えれば、新築物件のような快適さで暮らすことができます。
しかし、マンションにも建物としての寿命があり、老朽化してくると共用部分を中心に様々な問題が発生し、手放すことも難しくなってしまいます。今回は、マンションの寿命と耐用年数について考えてみたいと思います。
マンションの寿命について
平成25年の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(国土交通省)によると、「ここ20~30年に建てられた住宅は、性能が向上してきているので、リフォームを適切に行えば、100年でも十分もつものとなっている。」と記載されています。
マンションの物理的な寿命について、ひとつの考え方を示した一方、「マンションについては、築年数により融資対象から除外したり、借入期間に制限を設ける金融機関があり、その築年数の基準は35年~60年などとなっている。そのため、築年数が経過しているものはそもそも住宅ローンを利用できない場合がある。」など、経済的価値という観点からの寿命についても言及されています。
「マンションの寿命」については、様々な捉え方があるので、いくつか代表的なものを見ていきましょう。
法定耐用年数から見たマンションの寿命
法定耐用年数は減価償却の計算に使用するもので、法定耐用年数を過ぎると税務上の資産価値はゼロとなります。主な減価償却資産の耐用年数については、下記の通りです。
・木造モルタル造 店舗用・住宅用 耐用年数20年
・木造・合成樹脂造 店舗用・住宅用 耐用年数22年
・れんが造・石造・ブロック造 店舗用・住宅用・飲食店用 耐用年数38年
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 住宅用 耐用年数47年
※国税庁作成「主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)」より
一般的な鉄筋コンクリート造マンション(RC造)の法定耐用年数は47年になっていますが、これを超えたからといってすぐに住めなくなる訳ではありません。実際には築50年を超える物件も多数存在しています。
しかし、金融機関によっては、住宅ローンの融資可能期間を法定耐用年数迄または法定耐用年数に近い期間(50~60年)迄に設定しているケースがあり、法定耐用年数を過ぎた物件は、不動産市場で流通しにくい状況にあります。
このため、法定耐用年数が経済的価値からの寿命と捉える考え方があります。
耐震性から考えるマンションの寿命
地震大国と呼ばれる日本では、マンションの寿命を考えるとき、地震による建物への影響を無視することはできません。特に、旧耐震基準と新耐震基準については、十分に理解する必要があります。
旧耐震基準
旧耐震基準は、1981年5月まで約30年にわたり運用された耐震基準で、一般的には「旧耐震」と呼ばれます。中程度の地震(震度5程度)で倒壊しないことになっていますが、大規模な地震(震度6~7)に関しては規定がありません。
新耐震基準
新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月から施行されたもので、「新耐震」と呼ばれます。中規模の地震(震度5強程度)で家屋がほとんど損傷しない、大規模の地震(震度6強~7程度)でも家屋が倒壊・崩壊しないことが基準になっています。
旧耐震マンションは、耐震改修工事により補強している物件もありますが、新耐震基準と同等の耐震性を確保できているものばかりではありません。大地震が発生した際には、建物としての寿命を迎える旧耐震物件は少なくないと思われます。この点については、十分に認識しておきましょう。
コンクリート・配管の状態から考えるマンションの寿命
コンクリートおよび設備配管の状態は、マンションの寿命に大きな影響を与えます。コンクリートは経年劣化により中の鉄筋がさびやすい状態になり、また、ひび割れ等により雨水が入り込むこともあるため、定期的なメンテナンスを怠るとマンションの寿命を大きく縮めることになります。
また、物理的な耐用年数が30年程度と短い、排水管などの設備配管類の状態もマンションの寿命に大きな影響を与えます。設備配管類を簡単に交換できるマンションであれば特に問題ないのですが、1960年から1970年代の高度成長期に建設されたマンションの中には、設備配管類をコンクリートに直埋めし、交換が困難な建物が存在します。この場合、取り壊しとなることもあるので、十分に注意が必要です。
築年数の古いマンションの売却について
新耐震基準のマンションであれば、法定耐用年数47年を超えるものでも十分に住み続けることが できると考えられます。長く住み続けたいと考える方は、マンションの管理状況に注意しながら、資産価値の維持を心がけましょう。
一方、現時点で築40年を超える旧耐震基準のマンションについては、「法定耐用年数」「耐震基準」「コンクリート・配管の状態」の点で課題を抱えているため、即時売却が基本的な方針と考えます。
築40年程度の物件であれば、フルリノベーションの素材として、一部の買い手からは根強い需要もありますので、手放すのであれば最後のタイミングになるでしょう。売却をご検討の場合は、早めのご相談をおすすめいたします。
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