令和4年度(2022年)の婚姻および離婚の確定数は、婚姻件数501,116件、離婚件数193,253件となっており、離婚の際にマイホームを売却するという事例は珍しいものではありません。(厚生労働省の人口動態統計)
しかしながら、夫婦で収入合算して住宅ローンを組み、「連帯保証型」「連帯債務型」「ペアローン」などを利用している場合は、離婚時にトラブルとなる場合が少なくありません。今回は、離婚に伴う不動産売却について考えていきたいと思います。
財産分与の対象となる財産
財産については、「共有財産」「実質的共有財産」「特有財産」に分類され、原則として、夫婦がともに築き上げた財産については、どちらの名義になっているかに関わらず、財産分与の対象となります。「特有財産」については財産分与の対象外となりますので、ご注意ください。
共有財産
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産のことを指します。具体的には以下のようなものが含まれます:
- 婚姻中に取得した不動産(家や土地)
- 共同で貯めた預貯金
- 共同で購入した車や家具
- 共同で積み立てた年金や退職金
実質的共有財産
実質的共有財産は、名義が夫婦の一方にあるものの、実際には夫婦が協力して得た財産のことを指します。具体的には以下のようなものが含まれます:
- 夫婦のどちらかの名義であるが、婚姻中に共同で貯めた預貯金
- 夫婦のどちらかの名義であるが、婚姻中に共同で購入した不動産や車
- 夫婦のどちらかの名義であるが、婚姻中に共同で積み立てた生命保険の積立金
特有財産
特有財産とは、婚姻前から有していた財産や、婚姻中に夫婦の協力なしに得た財産のことを指します。具体的には以下のようなものが含まれます:
- 婚姻前から持っていた現金や預貯金
- 婚姻前から所有していた不動産
- 婚姻中に相続や贈与で得た財産
- 婚姻中に個人的な才能や努力で得た収入(例:ギャンブルや宝くじの当選金)
財産分与の割合については、夫婦双方1/2とすることが一般的です。妻が専業主婦で、夫の収入だけで生活していた場合であっても、「夫は会社、妻は家で働いた」と考えられるため、原則として共有財産は1/2ずつと考えられています。ただし、浪費が原因による離婚の場合は、浪費した側の受け取り割合を少なくすることは考えられます。
財産分与については、離婚成立後2年以内(除斥期間)に請求しなければならず、期間が経過すると請求権が消滅してしまうことに留意しましょう。
離婚時の不動産売却に関する留意点
財産分与の際、共有財産となる不動産の取り扱いについては、双方の意見調整を含め難航することが少なくありません。結果として、単純に売却してしまうということで決着するケースも多いので、ここでは離婚時の不動産売却に関する留意点について見ていきましょう。
不動産名義の確認
不動産の名義については、法務局で登記事項証明書を取得し、きちんと確認しましょう。一戸建ての場合、土地と家屋が別名義になっているケースもあるので注意が必要です。住宅ローンと不動産の名義は同一になっていることが一般的ですが、稀に異なるケースもありますのでご注意ください。
住宅ローン名義人・連帯保証人の確認
住宅ローンの名義が夫婦のどちらになっているか確認しましょう。連帯保証人として、どちらかの親を立てていることも少なくないので、名義人と併せて連帯保証人や連帯債務者についても確認することが重要です。
「連帯保証」「連帯債務」「ペアローン」など、夫婦で収入合算して住宅ローンを組んでいる場合は、夫婦それぞれがお互いの連帯保証・連帯債務の状態になっており、金融機関に対し、「離婚するので連帯保証、連帯債務を外して欲しい」という主張は通用しません。マイホーム購入の際に、十分理解しておきましょう。
残債の確認
金融機関から送付される返済予定表で、住宅ローンの残債を確認しましょう。選択している方が多い「元利均等返済」の場合では、想像以上に元本が残っていることがありますので、十分注意してください。
離婚時にマイホームを売却する手法について
住宅ローン残高と不動産査定額を比較すれば、オーバーローンになるかどうか、ある程度予想することができます。住宅ローン残高の方が大きいオーバーローンの場合は、任意売却を検討することになりますが、金融機関の承諾が必要になる上、売却後も残債が残ってしまうため双方で合意することが前提となります。
不動産仲介による売却
不動産会社に売却活動を依頼する「不動産仲介による売却」が最も一般的な手法になります。相場から大きく乖離することはできませんが、売主側の希望額で売り出し価格を設定できることもあり、高値売却の可能性があります。しかしながら、売り出し価格が高すぎると買主が見つからず、売却活動が長期化することになります。結果として、値下げを余儀なくされることになるので、売り出し価格については不動産会社と相談した上で決めていきましょう。
不動産買取
「不動産買取」は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、買取金額が折り合えば、短期間で現金化できるメリットがあります。時間がない方におすすめの方法ですが、「不動産仲介による売却」に比べると、買取価格は6~8割程度の水準にとどまるため、高値売却を希望する方には向いていません。
任意売却
「任意売却」は、オーバーローンの方向けの売却手法ですが、金融機関の同意を得ることが前提となるため、必ずしも実現できるとは限りません。
また、任意売却後も債務は残ることになり、マイホームを失った状態でも少しづつ分割返済を続けなければならないため、十分な検討が必要と言えます。
離婚時の不動産売却は、各家庭の事情や不動産売却価格、住宅ローンの残債額によって適切な方法が変わってきます。早めに相談し、できる限り有利な方法を見つけていきましょう。
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